いきなりで恐縮だが、一ヶ月後に僕は25歳になる。
学ばなくてはいけないところばかりの若造だが、生まれてからもう四半世紀が過ぎようとしているんだなぁと思うと、少しばかり感慨深い。
高校在学時も大学生に進学した後も、ピーターパンシンドローム的な症状を患っていた自分にとって、「大人になりたくない」という思いは結構つよいものであった。
しかし、もうぼちぼち、そんなことも言ってられない歳になってきている。
これからは、子供心を忘れないような大人になるのが夢である。
具体的には例えば、毎年初雪を喜べるようなお爺ちゃんになりたい。
いや、ガチでそう思っている。
大人になりたくなかった自分ではあるが、誕生日を迎えることは嬉しいことだった。
自分の誕生を祝ってもらえることは、本当に感謝なことだ。
祝ってもらうなかで、他の人から承認されていることを感じることができる日、それが誕生日だった。
しかしながらここ数年、誕生日を迎えることに対して、なにか少し素直に喜びきれない自分がいることを発見する。
誕生日プレゼントを贈ってくれる人がいる。誕生日会を企画してくれる人がいる。本当に嬉しいことだ。
心からありがとうと思う。
だけど同時に、祝いの言葉をきかなくなった友人のことが脳裏によぎる。
仲良かった人が、次の年にはもう連絡もあまり取らない関係になる。
特別なことではない。
ある程度の付き合いを続けている友人でも同じだ。
ちょっとしたきっかけで、「親友」との距離は開く。
環境が変われば、人の繋がりは薄れる。
それだけのこと、当たり前のことだ(寂しいけれど)。
贅沢な性格なのである。
親しい人といつまでも親しくありたい、他者の変わらぬ友情・愛情を受けとりたいと、願っている。
親しい人との関係に慣れてしまっているのだ。
それが自分に与えられることがまるで当然かように、そういった人間関係を願ってしまうのである。
他の人の誕生日を、自分だっていつも本気で祝えるわけではないくせに。
とことん自分勝手な生き物である。
きっと僕は贅沢にも、いつまでも変わることのない愛を手にしたいと、願っているのだ。
Bump of Chickenには、「HAPPY」という曲がある。
「Happy Birthday」というフレーズをリフレインするこの曲を、とりあえずはバンプ流「バースデーソング」と呼んでよいと思う。
しかしこの曲には、「誕生日おめでとう!」「生まれて来てよかったね!」という底抜けた明るさは微塵もない。
なんというか…、暗いのである。
いわゆるバースデーソングとは一線を画す歌詞。
悲しみは消えると言うなら
喜びだってそういうものだろう
喜びだってそういうものだろう
誰に祈って救われる?
継ぎはぎの自分を引きずって
継ぎはぎの自分を引きずって
闘う相手さえ分からない
だけど確かに痛みは増えてく
だけど確かに痛みは増えてく
「“Happy”Birthday」と言われる日であるにも関わらず、幸せが感じられない。
いや、ことは誕生日に限ったことでは全くない!
生まれてきたことそのものを、“Happy”だといつも実感できるわけじゃない。そんな僕たちがいるのだ。
「なんでおれ生きてんだろ」という根本的な疑問を抱えつつ、それでも歳を取って生きていく。
人生には悲しみが多いばかりか、自分の心を震わせた喜びはすぐに消え去っていってしまう。
なら生きる意味はどこにあるのか。
かけがえないと思ってた喜びには賞味期限がある。
大切な経験も、誰かとの友情もまた、移ろい消えていくかもしれない。
だけど、もう過ぎ去って戻ってはこないその時間から、私は何か大切なものを確かに受けとってきた。
「なくしたものに残された愛しい空っぽ」のうちに、消えない何かが残っている。
だとしたら僕は、全てが移ろい消えていくこの地上の人生のなかで、変わらないものを受けとってきたのではないか。
悲しみとある種の諦観のうちに微かに光るこの希望について、「Happy」は歌っている。
「生まれてきてよかった」なんて簡単に言えないと思う人に向けた、「Happy Birthday」の曲。
クリスマスが近い。
忙しさや他人をうらやむ気持ちのなかで、「人生は無意味」「こんなことやって何になんだろ」そう囁く声が聞こえてくるかもしれない。
自殺者が最も多いシーズンというのもうなずける。
そんななかで、むしろこの時期だからこそ、生まれてきたことの意味を、あるいは新しい命をもらったことの意味を、もう一度味わう冬となりますように。
クリスマスが近い。
忙しさや他人をうらやむ気持ちのなかで、「人生は無意味」「こんなことやって何になんだろ」そう囁く声が聞こえてくるかもしれない。
自殺者が最も多いシーズンというのもうなずける。
そんななかで、むしろこの時期だからこそ、生まれてきたことの意味を、あるいは新しい命をもらったことの意味を、もう一度味わう冬となりますように。